リスクパリティ戦略と強調資金供給2020/03/19

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ドル高とボラティリティ 国債3か月物とWTI原油

世界各国の短期金融市場でドルの調達コストが急上昇し、資金がひっ迫していることを受けて、米連邦準備理事会(FRB)は新たに9カ国にドルを供給すると発表しました。

これまで日欧など5中央銀行と結んできたドル資金の供給策を、新たに豪州や韓国など9カ国に拡大すると発表しました。各国中銀は民間銀行に米ドルを供給する際、FRBから低利で資金を調達できるようにする為です。各国の短期金融市場では基軸通貨ドルの調達コストが急上昇しており、各国中銀は協調供給に乗り出します。

今回は、短期金融市場のドル調達コスト急上昇という話です。

YouTube リンク https://youtu.be/SSSPEPuJ1do

短期金融市場の前に、大半をリスクパリティー戦略という投資方法に説明を割きます。

リスクパリティー戦略は、特にリーマンショック以降の時期に脚光を浴びている投資戦略です。「リスクパリティー」の「リスク」はいわゆる資産価格の変動(標準偏差)のことです。「パリティ」というのは等価という意味です。

つまり、複数の資産へ配分する際に、リスクの寄与が同じになるようにしようというのがリスクパリティーの考え方です。平たく言えば、AIトレードの考え方であり、裁量トレードとは別の考え方のトレードとも言えます。

株式60%と債券40%の2種類、2銘柄でトレードをするとします。そもそも論として、株式の方がリスク(資産価格の変動)が高く、かつウェイトも株式の方が高いため、全体のリターンはほとんど株式に連動することになります。

リスクパリティー戦略として、株式60%、債券40%という比率だとするならば、リスクパリティーはポートフォリオに対するリスクの寄与を同じよう(等価)にするため、株式と債券のポートフォリオの場合、債券の方がウェイトが高くなります。

株式60%と債券40%の2種類、2銘柄だけで無く、2種類の全体の収益をAIで算出した場合、ここ数十年の環境を振り返ると、投資商品の収益性を測る指標であるシャープレシオという観点から見て、株式より債券が勝ってきました。

そのため、リスクパリティー戦略のシミュレーションをすると、債券のウェイトが増える結果、過去のパフォーマンスが非常によく見えてきました。つまり、金融緩和の金余りから来る順張りトレードの継続という現象です。行動経済学で言えば、ハーディング現象です。

ハーディング現象(効果)は「有名な飲食店にどうして行列が出来るのか?」を説明する時に使われる行動経済学の理論です。ハーディングとは、「(動物の)群れ」を意味する英語です。

周りの人(集団)と同じ行動を取ることで、安心を得ようとする群集心理のことです。ハーディング効果により、人は結果的に多くの人が同じ行動を取ってしまう傾向が強くなります。

例えば、周りが間違っていたとしても、周りと同じように行動して安心感を得ることは、自分一人で行動するよりも重要と思ってしまうのです。

日常生活の中で、仮に周囲の人、全員がiPhoneを使っていたら、アンドロイドのスマートフォンよりもiPhoneを選ぶ方が良いような気がします。また、なかなか予約の取れないお店があったとしたら、きっと良いお店なのだろうと自分も行きたくなります。

このように、人は日常的にハーディング効果によって影響を受けているのです。人間は、周囲や世の中が良いとしているものや、よく取られている行動を選びがちであると言えます。

つまり、金融緩和の金余りから来る順張りトレード、低ボラティリティの株高に依存した株式買い・債券買いの連鎖現象です。

また、群れていると安心で同じような行動を取る場合もあれば、例えば牛の中には、仲間が襲われているとみんな一斉に逃げ出す種類もいます。周りと同じように逃げ回るので、一斉に逃げ出す現象もハーディング現象の一例であると言えます。

リスクパリティー戦略(AI)において、株式のボラティリティの上昇を考えるとします。

ある日突然暴落が起こり、株式のボラティリティが上昇すると、リスクパリティー戦略は株式のウェイトを減らしにいきます。ボラティリティが上がった分、ウェイトを下げないと他の資産とのリスクが等価にならないからです。

そして、ハーディングが起こっていると、多くのリスクパリティファンドが一斉に株式を減らしにいきます。その結果更に株価が下落し、ボラティリティが上昇します。するとそのボラティリティの上昇を受けて、更に株式を減らしに・・・・。というスパイラルに陥る可能性があるのです。

ハーディング(AI)の何が問題かというと、その戦略に資金が集中しすぎて、何かショックがありその戦略がワークしなくなった時に、一斉に資金移動が起こり、その動きが更なるアンダーパフォーム、運用成績がベンチマークを下回る連鎖につながります。

新型ウイルスの感染拡大により、金融緩和の金余りから来る順張りトレードの一斉移動が起った訳です。つまり、膨れ上がった数の牛が一斉に逃げ出し、行き場がなくなっている状態です。運用成績がベンチマークを下回った資金がドルを求めて逃げ惑うのです。

当初、金利の引き下げ予想から国債が買われ(債券利回りの下落)、その戦略が集中し過ぎると共に、原油価格の急落というショックで、リスクパリティー戦略がワーク、機能しなくなりました。直後、膨れ上がった数の株式や債券が一斉に逃げ出すことはAIにとっては当然の事です。そこで、ドルという現金に換えるべく、行き場が無くった牛が走り回っている状態となります。

新型コロナウイルス感染が拡大し始めて以来、金融市場の激しい動揺は一向に収まる気配を見せません。投資家は現金確保に奔走し、ボラティリティが高まる中でアルゴリズム取引が発動し、流動性枯渇という状況に陥っています。

そこで、米連邦準備理事会(FRB)は新たに9カ国にドルを供給すると発表せざるを得ない状況になったのです。

今回は、リスクパリティ戦略と協調資金供給という話でした。

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